「大丈夫ですか救世主様?」
ウラは痛みも忘れてただ呆然と突っ立ったままだ。
サンタクルスから聞いていたがユニコーンの足は全種族中ずば抜けた脚力を持つらしい…だが、まさか自分の身の丈の倍近い男をたった一撃で倒すほどとは思ってもいなかった。
「ん?あぁ全然大丈夫…うん」
「…救世主様?何か拗ねてませんか?」
最後の最後で良い所を持っていかれたのだ。拗ねるのも分からないでもない。
「あのさ…もっと早く出てきてくんないかな…?」
「救世主様なら大丈夫かなぁ〜って…アハハ…」
何がアハハだ…。
「…あと救世主様って言うのもやめてくれないかな?なんかカッコ悪いじゃん…」
救世主が助けてもらうなんてマジでカッコ悪いだろ…。…こんなこと言ってる自分もカッコ悪い…。
その後ニコはウラをなだめていたが、ウラの機嫌が直るのにしばらく時間がかかった。
そんなこんなで最初のニコのイメージは良くはなかった。
それでもこれからしばらくいっしょに過ごす仲間だ。ウラは気を取り直して目的地へと向かった。
その道中ニコとは次の街の事やユニコーンやその他の種族の事をコミュニケーションがてら話した。
この世界で言う『魔法』とは火を操る事であり、魔法使いと呼ばれる者は炎のみを自在に操る。つまり、風を操ったりほうきに乗って空を飛んだりは出来ない。
魔法を使えるのはエルフと一部の人間だけらしい。
それに対しユニコーンは体から電気を発する事ができ、それは体質的なもので魔法と呼べるものではない。
しかしその体質を有するもの自体が少なく、更にその体質を有していても全員が全員その力が覚醒するとは限らないらしい。
この世界で最強と呼ばれる種族、竜族はかつて世界を支配していたが友好関係にあったドラゴンと対立し、その数は激減した。
伝説上の話でそれがどこまで本当かは定かではない。なんとも壮大で夢のような話だった。