フリッツはドラゴンに対して反撃を試みた。
だが、もう遅すぎた。街のいたるところから火の手が上がり数多のドラゴンが空を舞っている。
パイロットとして、軍人として、罪無き者を命をかけて守るべきだったのかもしれない。
しかし、今この戦闘機に乗っているのは自分1人ではない。
ベルは涙を流しながら燃える街をただ呆然と見つめていた。
来たばかりの世界で行く宛もない。
ベルの心情を考えれば話しかけるのは気が引けた、それでも燃料は無くなるばかりだ。
ベルが泣き止むまで待ち近くに降りられる場所は無いか聞いてみた。
ドラゴンに襲われたあの街から二山ほど離れた場所にこの世界で最大の国『グリッサンド』がある。
その国はこの世界で最も自由で平和な国らしくそこなら異世界の人間でも受け入れてくれるかもしれない。
フリッツ達はとりあえずその国に行ってみることにした。
うっすら明るくなり始めた空を横目にF25は風を切り飛行を続けていた。
「…初めてです」
突然ベルはポツリとつぶやいた。
「私、翼があるのに空を飛ぶの初めてなんです」
ベルの翼は普通より小さく羽ばたくことは出来るものの体を浮かすことすら出来ないらしい。
「空ってこんなに綺麗なんですね」
心なしかベルの表情は柔らかくなっていた。