最後の審判 最終話

マリリン  2008-06-23投稿
閲覧数[439] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「待ってくれ…理亜… 君は逃げるのか?」 夫、寛の顔のその病人は、いきなり理亜の腕を掴んできた。その力は、とても病人とは思えない力強いものだった。

今にも死にそうだった男に、こんな余力が残っていたことに理亜は驚愕した。

「は…離して! あなたは一体、誰? 聖也じゃないの? 寛なの?でもどうして?」思わずその腕を振りほどこうとしたが、容易には、自由にしてくれそうもなかった。

「そうだよ。君の夫の寛だよ。 君は、僕がこんなに高い熱で苦しんでるのに、看病もしてくれず、逃げだそうとするのかい? もう僕への愛は、一かけらも残っていないんだね…
君を苦しめたり、暴力を振るったことは謝るよ…これ、この通りだ。
だから許してくれ。 理亜… 頼む。僕を見捨てて逃げないでくれ…」彼は、眼に涙を一杯にため、床に額を擦り付けて哀願した。

理亜は、彼の様子を見て途方に暮れた。
しかし、寛への彼女の感情は今や嫌悪を通り越して、憎しみに近いものになっていた。

「神は敵をも愛せよと言われる… でもそんなこと人間にはできない。不可能よ。もし憎んでいる人間に親切にできたとしても、それは、自分の感情を押し殺して、ねじ曲げたものだわ… そんな偽りの行為に意味があるのかしら?
不可能を可能にするためには、祈るしかない?
結局、人間は、祈ることしかできないの?」理亜の頭は、混乱を極めていた。そして、そこから逃げ出すことも戻ることもできず、全身の力が抜けたように、その場にくずおれた。



i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 マリリン 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]
たった1980円で★
簡単に小顔GET!!


▲ページトップ