ウィルは右手をだして警部を止めた。
「オレが行きます。」
ウィルはハリソン警部を押し退け、炎へ飛び込んだ。「なっ、ウィル!」
「ウィル―――――!!」
ウィルの背中が炎にまぎれた。
燃えたぎる病院内に生きた人の気配はなかった。
(ここにいるはずなんだ、ここに・・・・)
しかしウィルの目的は別にあるようだ。
「どこだ放火野郎!!いんのはわかってんだ!!!」ウィルの叫び声は、燃える炎が建築を侵食する音と重なり、すぐにかき消されてしまう。
ミシミシッ
ウィルの背後から怪しい影が襲い掛かった。
(後ろかっ!)
ウィルは反射的に回し蹴りをした。
バコッ
予想以上に敵は大きかった。鈍くよろめきながらも、敵は体勢を整え直し、ゆっくりとこちらを睨んだ。
その姿は人と呼ぶにはあまりにも醜く、怪物のような奇怪な姿だった。
「やっぱりな。お前はノイザ―だった。」
ウィルは言った。
「てめえが署から逃げた時聞こえたんだよ。雑音が。」
怪物・・・・いや、不審者の男は、口を開いた。
「お前も・・・・ノイザ―なのか。」
男の声は原型をたもっておらず、モザイクをかけられたようだった。