花の調べ 7

朝倉令  2006-05-19投稿
閲覧数[537] 良い投票[0] 悪い投票[0]



「すごいすご〜い! まるで指に魔法がかかったみたいだわ!」


『うふふっ♪ お姉さんがもともと上手だからよ』



今夜の曲は【子犬のワルツ】だ。


とっても可愛らしいアップテンポな曲に合わせ、猫たちが声を立てずに『にゃーっ』と鳴く様な仕草をする。





すっかり打ち解けた僕達に、咲季は新しいお遊びを始めていた。


そもそも小村咲季は〈幽霊〉なのである。



「それじゃ、取り憑く事できるのかしら?」


「いや、取り憑くってお前なぁ……」


『う〜んとね? はちょう、とかが合えばできるんだって』


「あら!面白そう」



そんな感じで咲季は同じ名前の『コムラサキ』という小さな蝶さながらに、僕と薫に代わる代わる入っては、はしゃいでいる。



花から花へ、……と言いたい所だが、僕を花に例えるのは(かなり)無理があるので敢えてそう言わない。


咲季が入り込んだ時の薫は、最初の会話のように〈天才ピアニスト〉に変身するって訳である。






僕らがそんな事をして楽しんでいる時、表で車のドアがバンッ、と閉まる音がした。






「あなた方は?……」


『あ!壮吉!』


「やはり、姉さんもいらしたんですか……」



不意にベランダの窓から顔を覗かせた白髪の紳士を見た咲季は、驚きの声をあげていた。









投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 朝倉令 」さんの小説

もっと見る

その他の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ