五色の炎?

中村モモ  2008-06-25投稿
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とりあえず一度、皆がいる場所へ戻ることにした。
ランクルを出て、波打ち際の方を見やると、にぎやかな、甲高い声が響き、初夏の熱い太陽が、それを照らしていた。
まるで、たった今起きたことが、全部嘘だったみたいだ。
だけど、私の右横と頭の上には、黄色と青の火の玉が、ちゃんとそこにあった。
何もかも信じたくなかったが、信じざるを得ない状況だった。
気づくと梁が私のとなりにすっ、と立っていた。
「おれは死にたくない」
梁が言った。私だって、呪い殺されるなど、まっぴらごめんだ。
「近いうち、またお話ししましょう。なるべく早く」
「もちろん」
私は梁に、夫との間でさえ感じることができなかった、強い絆を感じた。まだ、出会ってからいくらも経っていないというのに。
梁と別れ、友人たちの方へ行くと、皆で、ビーチボールを使ってバレーボールをやっていた。
「なに?今の人。話終わったの?」
友人に聞かれ、私は、
「うん。終わり。ラブアフェアなんかじゃないよ」
と、つとめて明るく答えた。
「分かってるって」
友人は笑った。
「ねぇ、あっちのチームに入ってくれない?向こう弱くて、勝負にならないの」
「OK」
私たちは、日が暮れるまで、ひたすらボールを追い続けた。
ずっと、このまま呑気に遊んでいられたらいいのに、と思うと、なんだか涙が出そうになった。
梁とは3日後、西船橋のファミレスで待ち合わせた。
白い、清潔なポロシャツに、チノパンの出で立ちの梁は、確かに、一見して、中国からの富裕な留学生を思わせる風情をしていた。その格好に、潮焼けした髪は、どこかミスマッチだった。
「まず、どうやって探すのですか?」
梁は、わけもない、と言いたげな顔をし、
「炎は、炎を呼びます。だから、この間、あなたは海へやって来た」
確かに、言われてみたら、海水浴など、子供の頃以来だった。この数年など、日焼けを恐れて、決して行くまい、とさえ思っていた。それが突然、急に行きたくなったのだ。
「確かに」
「残りの炎の持ち主も、きっと近いうち、おれらの所へ来るはずです。だけど、炎の持ち主は、そこにおれらがいると知って来ているわけではないから、こちらから探さなければならない」

梁は、アイスティーをゆっくり飲んだ。



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