少年の言葉に対しての《獣》の返事は、直ぐに返って来た。『オマエガ………クルノヲ………ズット……………マチノゾンデイタ』
もう完全に熱くなっている少年も、直ぐに返事をした。
「俺を待っていた?何の目的で?」
そう答えたその時だった。目の前にいる《獣》の姿が、徐々に消えていくのが少年の目に映った。
「おい!待て!どうなっているんだ?お前は一体何なんだ!?」
消えながら、《獣》は答えた。
『ワタシハ……オマエノ……デ…リ…オマエ…シン……………』
最後の《獣》の言葉は、所々がかすれて、上手く聞き取れなかった。少年は、一回《獣》を探してみようと考えたが、探すあても無いので、とりあえず、小屋にいるある人物に聞いてみようと思い、再び山頂付近に向かうことにした。
登山を続けること四時間。九合目辺りまで来た頃だろうか。少年の目の前に、再び狼が現れた。と言っても、今回は極普通の狼である。普通の狼だから、普通に襲いかかって来た。少年には武器も何もないので、ただ逃げるしかなかった。そうして逃げること十分。少年は、遂に崖に追いつめられてしまったのである。
もう逃げ場は無い。まさに、絶体絶命のピンチである。
少年は、死を覚悟した。