そして、少年目掛けて狼が飛びかかって来た。その時だった。目の前に、一人男が現れた。男は、背中に掛けていた、1mほどの巨大な剣を外し、狼に向かって振り下ろした。狼は真っ二つに裂け、飛びかかって来た時の勢いで、そのまま崖へと堕ちていった。少年は一瞬の出来事に呆然としていたが、男が再び剣を背中に掛けるのを見て我に返り、男に話し掛けた。
「え〜と、助けてくれて、ありがとう」
男は、少年より少し年上なぐらいだろうか。顔はフードを被っていたので、よく見えないが、身長などからしてそう見える。
「…礼などいらん。覚醒までもう少しなんだ。それまでに貴様に死なれては、元も子もないからな」
少年は、男の言葉も気になったが、何よりも男の服装が気になった。男は、極寒の雪山にも関わらず、薄い茶色く古びた布。それから作った長い貫頭衣を着て、その上に、少し厚めの古びた布でできた、長いチョッキのようなものを着て、その上に、黒いマントを羽織っていた。マントと言っても、フード付きである。足は、黒曜石できた、膝まで伸びているブーツを履いていた。このブーツには、細石刃でできたトゲがいくつも付いていた。誰がどう見ても、怪しい格好である。