死体放棄少女・八

黄粉  2008-06-26投稿
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優子は、普段着のままで学校の体育館へと向かう。

麻里奈は苦しんでいるんだ。

あのアパートに放棄状態にあった死体は、麻里奈が殺した死体だなんて私思ってないよ。

きっと麻里奈は誘拐されただけだ。そして昨日誘拐犯から逃げ出して私に電話した。



推理をする名探偵のように、優子はぼんやりと考えていた。


麻里奈は苦しんでいるんだ・・・

優子は、また自分の中で囁いた。



結局体育館に来るまでに、男には会わなかった。
「ちゃんと読んでくれたのかな?」

優子は独り言のように呟いた。

別に来なくてもイイけどね・・・。

広い体育館に響く一人だけの足音。

優子はひどく寂しい気持ちになった。

そして、その場にしゃがみ込み、橋本を待った。



その時、もう一つの足音が体育館に響いた。

「麻里奈?」

優子は振り返る。

「やあ。」

そこにいたのは橋本ではなく、頭のボサボサな男だった。

「なんだ・・・手紙ちゃんと読んだんだ。」

橋本ではなかったが、何故か安心した。優子はまたしゃがみ込み、目をつむる。

「優子。麻里奈をまだ待つつもり?」

男は陽気な口調で言う。
「麻里奈に会いたくないの?なら来なきゃよかったのに。」

男は優子の腕を掴み、出口へと連れていこうとした。

「やめてよ。私、麻里奈に会わなきゃいけないんだよ。」

しかし男はやめなかった。

「悪いのは麻里奈だ。優子が関わることじゃない。だから、帰ろう。」

優子はとなる。

「なんでそんなことが言えるの!?麻里奈は私の親友なのに!親友を助けるのは当たり前でしょ?」

「優子は少し優し過ぎる。だから関わっちゃいけないことにも関わっちゃうんだよ。」

優子は男の手を力いっぱい振り切り、体育館の中へと走る。

「麻里奈ばっかり悪く言わないでよ!!」

その時、何か人影が見えた気がした。

「・・・!」

「優子!危ない!!」

男は体育館中に響くような声で叫んだ。

「痛!!」

優子の肩に痛みが走った。

「ああ!」

肩を見ると、血がついていた。

しかし、そんなに痛くない。そもそも優子は怪我なんてしていたかった。
「優子?大丈夫?」

優子は見た。

男の腹に、包丁がぶっすりと刺さっているのを。

優子は声にならない叫びをあげながら、男にへと駆け寄った。

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