9話『アラタの想い…』
どのくらいたっただろう。
私はその場を動けなかった。
今はアラタの事は頭になく、拓哉さんの事だけが頭から離れなくて…。
死んだなんて嘘だ………。信じられない。
…立ちすくむ。
携帯が鳴った…
アラタだった。
アラタ『いずみ、これから帰るよ。
何か買って帰るものとかある?』
いずみ『アラタ………私帰らないと。』
アラタ『どうした?』
いずみ『帰らなきゃ………拓哉さん、死んだの。』
アラタ『いずみ、拓哉さんって旦那の事?』
いずみ『ごめんね、アラタ。』
アラタ『待った!
すぐ帰るから待ってて。
いずみ、必ずそこにいろよ。』
私は返事もしないで泣いていた。
20分くらいでアラタは帰ってきた。
私の異変にすぐアラタは気付いた。
アラタ『いずみ?』
いずみ『私のせいよね。こんな生活してたから天罰が下ったのよ。
なんで私以外の人まで不幸に会うの?
しかも、それが一度は一生を共にすると決めた相手だなんて…。
私以外に誰のせいだって言える?』
アラタは私を抱きしめた。
アラタ『いずみ、落ち着いて。
死んだのはいずみのせいじゃないから。』
いずみ『私のせいよ。事故だとしても私が死なせたのと同じ…。』
アラタは黙っていた。
私は自分を責めた。アラタの気持ちも考えずに…。
アラタは私の手を握ったままだった。
いずみ『アラタ、ごめんなさい。
今は拓哉さんの事しか考えられないの。
私のすべてを受け入れて結婚してくれた大切な人だった…。なのに私は………。』
アラタ『いずみ………。』
私はアラタを傷つけた。
アラタ『家まで送るよ。』
ただそれだけ言ってアラタは送ってくれた。
別れ際、
アラタ『待ってるから。』
と言い残して…。
その後、色々あった。
拓哉さんが離婚届を持っていたこと。
それは、私に対する最後の愛だったのかも知れない。
続く…。 9話No.1