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それから数日後――
週末までは、それ程時間が経つのが遅くは感じられなかった――
僕は、エリカちゃんと一緒に、その女の子の入院する病室を訪れていた。
『えっと‥‥。502号室。相沢 ユキ。あったわ、未来ここよ。』
病室内に入ると、その女の子、ユキちゃんが僕達の方を見て、嬉しそうに微笑んだ。
『エリカお姉ちゃん!!』
ユキちゃんは、ベッドから下りて、僕達の方に駆け寄って来た。
『ユキちゃん。元気にしてた?!はい、これ。ユキちゃんの大好きな“Hey Say JUMP”のCD。』
『わぁい。ありがとう!!エリカお姉ちゃん!!』
十歳の女の子の素直に喜ぶ、その純真無垢な笑顔を見た瞬間、
僕は胸が締め付けられる様な、何とも言えない感覚に陥った。
一体この子の何処が病気だと言うのだろう。
こんな、小さな女の子が――
『お姉ちゃん、このお兄ちゃんは誰?!』
ユキちゃんは、まん丸い大きな目をして、不思議そうに僕に視線を移した。
『ユキちゃん、このお兄ちゃんはね、お姉ちゃんのお友達なの。今日からはユキちゃんともお友達だよ。』
エリカちゃんは、ユキちゃんに優しくそう言った。
『うん。お兄ちゃん、ユキのお友達になってくれるの?!』
僅か十歳の女の子にそう言われた位で、僕は何故か照れてしまった。
それは、何時からか僕が忘れかけていた、純粋で真っ白な心と、真っ直ぐな瞳だった。
『ユキちゃん、僕は未來。よろしくね。』
僕とユキちゃんは、握手を交わした。
『未來、取り敢えず病室から出て話しましょう。』
五人部屋の、その病室から出た僕達は、長い廊下の一番奥の来客用のソファーに腰を掛けた。