盗賊に襲われた日から更に3日、ようやく街が見える所までたどり着いた。
グリッサンド国メシア、この世界で最大の国であり最大の街。
多種族が共生する数少ない国だ。
「ニコぉ、あそこにお姉ちゃんいるの?」
ローはメシアの街を指差した。
「いるよ、もうすぐ会えるからね〜」
それを聞いたローは嬉しそうにはしゃいだ。
「え?あの街に姉ちゃんいるの?」
「言ってなかったっけ?あたしと同い年なんだよ」
驚きはしたもののあてもなくとりあえずメシアを目指していたウラは内心ホッとした。それよりもニコの急なタメ口のほうが気になった。
ウラを様付けで呼んでいたがあの日以来友達感覚でしゃべりかけてくる。
「早く行こぉよー」
よほど嬉しいのかいつもおんぶをせがんでいたローは珍しく自分で歩き始めた。
歌を唄いながらぎこちないスキップをするローをニコが追いかける。ニコも楽しそうにローといっしょに歌い始めた。
10分ほど歩いただろうか。
ついさっきまではしゃいでいたローが突然ニコに抱きついてきた。
「どうしたの?」
ニコは尋ねた。
「…何かいる…何かこっち見てる…」
そういうとローはニコの胸に顔をうずめ震えだした。
「何だ?また盗賊か?」
不穏な空気を察しウラは銃を抜いた。
遠くでざわざわと聞こえる木々の揺れる音、動物の泣き声、ウラとニコは必死に耳をそばだてる。
だがその不穏な空気の主は実に堂々とウラ達の目の前に現れた。
それは大きな樽の様なものを背負った男だった。
「その子供を渡せ」
低くかすれた声、どこか不安を掻き立てるようなそんな声だ。
盗賊とは違い単独行動、さらには軍人のような服装、普通の者とはどこか違う妙な空気が付きまとう。
だがそんな男の突拍子の無い要求を受け入れるはずもない。ウラとニコの返答は決まっている。
「よぉし、ニコ言ってやれ」
そう言うとニコはうなずき男を睨んだ。
「誰が渡すかロリコン!!」
それを聞いた男の目の色が変わった。
ただ者ではない。そう感じ取ったウラの額から汗がにじむ。
男は四つん這いになり戦闘体勢に入った。