あの体育館での事件があってから二日後、私は病院のベッドで目を覚ました。
隣にはお母さんがいた。
お母さんは、私の意識が戻ったのを確認すると、泣きながらお父さんと離婚したということを私に告げた。
最初は悲しかったが、途中から、私は吹っ切れた。これは現実なんだから・・・
「だからね、優子は今日から綾瀬優子になるんだよ。」
そうだ。私は前まで佐藤優子だったけれど、お母さんが再婚してこれからは綾瀬優子になるんだ。
変な感じ。
苗字が変わっただけなのに、自分自身も変わってしまった気分だ。
「・・・うん。分かった綾瀬優子ね。」
お母さんが、先生に私の意識が戻ったということを報告しに病室をでていった。
私一人だけになった病室は静かで、真っ白だった。
そういえばあれから麻里奈はどうなったんだろう。テレビや新聞ではまだ捕まってないみたいだし・・・
あと、あの男はどうなったのだろう。うまく逃げたのだろうか無事だということは確かだ。
「結局名前聞けないままだったな・・・。」
私はベッドに沈み込み、今までの出来事を振り返った。
「優子。」
「え・・・?」
私は驚いた。
ベッドを囲んだ白いカーテン越しに、少女の声で聞こえた。
「意識、戻ったんだ。」
私は少女の名前を呼んだが、少女はそのあと何も言わず、病室を出て行った。
私は思わずベッドから身を乗り出した。
「麻里奈・・・」
それしか私の口からは出なかった。