S大学は私のような学力でも入学できるような大学でしたが、進級には非常に厳しい基準が在り、1年から2年で半数が留年し、最終4年間で卒業できたのは、入学した3分の1以下でした。入学した当初、10人の友人ができましたが、留年無く、4年間で卒業できたのは私だけでした。S君も1年から2年で1度留年し、最長は各学年で1度留年、8年間かけて卒業した友人もいました。この大学はアメリカの大学のように、希望する者は入学するのは容易ですが、卒業するのは極めて困難な大学でした。
私は電気工学科を4年で卒業すると、同大学の機械工学科に学士編入しました。編入試験は狭き門で、応募者約50名に対し、合格者は僅か2名で、3年に編入できたのは私だけで、もう1人の合格者は2年からの編入になりました。
この大学は、1年から一般教養課程に交じって、専門課程の講義も在り、2年間で専門課程全てを終了するのは困難を極めました。
1年目は、1年から3年までの専門課程の講義、機械工学実習、機械製図実習を受け、毎日、実習レポートの作成と提出図面描きに追われていました。そんな忙しい中、機械工学実習は、週末の金曜日の午後に姉妹校であるO工業大学の機械工場で行われていました。S大学は完全週休2日制でしたから、機械工場実習が終わると2日間休める事もあって、O工業大学に行く事は大好きでした。忙しい1週間が終わり、何かほっとする気持ちがしました。ですから、金曜日の午後は、あの頃と同じで大好きです。
機械工学科の4年に無事進級しましたが、忙しい毎日は同じでした。卒業研究が入って来たことで、昨年より、なお忙しく成りました。
私は、内燃機関研究室に所属して、同じ研究室の4人の仲間と、1800ccエンジンの効率を最大限に引き出す研究をしました。知り合いの自動車解体業者からN社製の1800ccのエンジンを買い取り、トラックで研究室まで輸送しました。まずは一流メーカー製のエンジンを分解してスケッチし、その図面を基に、自分たちのアイデアを盛り込み、図面完成までを卒業研究課題としました。
大学の卒業研究課題としては、低レベルかも知れませんが、大好きな、車のエンジンを、生産コストを考える事無く、自由な発想で図面化する事は、非常に楽しい卒業研究に成りました。
つづく