男は四つん這いの体勢から勢いよく突っ込んできた。
ウラはそれに怯むことなく銃口を向け光を放つ。光速のエネルギーの塊が一直線に男に遅いかかる。
光のスピードとほぼ同じ速さ。避けるのはもちろん、直撃さえも免れない。
直撃さえも…光を放った瞬間まではそう思っていた。
だが樽の男は引き金を引くのとほぼ同時にガードを固めた。
光の弾は腕で弾け男は吹っ飛ばされた。
「…ただの銃ではない。異世界の人間、お前が救世主か?」
男はゆっくり立ち上がると腕を押さえながらウラに問いかけた。
「あぁ、異世界から来たのは本当だ。まぁ救世主かどうかは分かんないけど」
それを聞いた男はローに視線を移しすぐにまたウラに視線を移した。
「そうか。探す手間が省けた」
男がそう言うとガチャンと、背負っている樽から微かに不気味な音が聞こえた。
樽のあちこちが開き始める。
開いた所からは小型の機関砲のような銃身やミサイルの弾頭が顔をだした。
「こりゃマズいな…」
ウラは大声で叫びニコとローに下がっているよう指示した。
銃口を向け光を放つ。
「無駄だ」
男は固めたガードを緩めず、光を弾いた。
特殊な素材で作られているのかその鎧を貫くことができない。生身であれば防御の腕は吹き飛び既に絶命しているはずだ。
樽は準備を整え攻撃に移り始めた。
「そこまでだ!」
どこからともなく響いてきた低く大きな声。その声は樽の男の後ろの方から聞こえてきた。
「『犬』と『猫』か…」
そう言うと樽の男はウラそっち退けで振り返った。
「大人しく引くんだポッドマン。さもなくば我が部隊が全力で貴様を潰す」
怒声とも言えるほどの迫力のある声、その男は大勢の兵を引き連れている。
それを見たポッドマンは樽からとび出す武器を閉まった。
「まさかすでに動いていたとは、さすがは『犬』だな」
樽の男はそれだけ言い残すと去っていった。