『お兄ちゃん。ユキの頭の中にね、大きなオデキがあるんだって。でね、来週手術なんだって。』
ニコニコしながら僕にそう話してくれたユキちゃんは、なんて明るくて強い子なんだろうと思った。
その明るさは、この子の天性によるものなのか――
それとも僕達大人に、わざと心配を掛けまいと、明るく振る舞っているのだろうか――
『ユキちゃん大丈夫よ。手術をして、先生にそのオデキを取ってもらったら、また前みたいに学校に行けるんだよ。』
優しくユキちゃんの頭を撫でるエリカちゃん。
『うん。ユキ‥‥頑張るね。』
ユキちゃんは、静かに強く、そう言った。
『ユキちゃん。お兄ちゃんがね、今‥おまじないをしてあげる。』
僕は、思わず自然とそう呟いていた。
『おまじない?!』
ユキちゃんは、不思議そうな顔をして、僕を見つめた。
そんなユキちゃんの横で、ニヤニヤ笑っているエリカちゃん。
もう、これはやるしかない。
『じゃあ〜〜んっっ!!注目!!
僕の変人アイテム、赤い毛糸だっっ!!
毎日スーツの内ポケットに、正露丸と一緒に忍ばせているのサ!!
今日はヤルぜ!!
ユキちゃんの手術の成功を願ってね!!
行くぜぇ〜〜いっっ!!
ユキちゃんの手術は大成功!!大成功!!大成功!!絶対大成功〜〜〜!!
ほれっ!!やま!!かわ!!あみ!!うまのめ!!つづみ!!ふね!!
大成功!!大成功!!絶対大成功!!
やま!!かわ!!あみ!!うまのめ!!つづみ!!ふね!!
大大大成功〜〜〜!!
ユキちゃんの手術は大成功!!絶対大成功〜〜〜!!
うおおぉぉぉ〜〜〜!!』
僕は、ユキちゃんの前に立ち、数日前、オーディションで披露した“ひとりあやとり”を、“おまじない”と掛けて、連続で繰り返した。
オーディションの時は、こんなに叫ばなかったけどね。
『ち、ちょっと!!未來!!此処は病院よ!!静かにしないと!!』
エリカちゃんが慌てて僕を止めた。