「あ〜あ。とうとう結婚第一号誕生かぁ。俺達もそんな歳になってしもうたがな」
学生時代からの親友のひとりである、有馬悟志と新婦美樹さんの結婚式と披露宴が終わって、二次会の会場に向かうタクシーの中で、同乗したもうひとりの親友、山村涼平に向かって俺は溜息をついた。
学生時代から何をするにも一緒につるんできた仲間だったが、大学を卒業して三年もたつと、さすがに男だけでつるんでいたわけでなく、恋もし、ついには結婚までしてしまう年齢になっていたんだなと、改めて思うわけで、俺は何となく淋しかった。
「何、情けない声出してんねん。夏希が彼女を作らへんのが悪いんやろが」
披露宴で飲んだビールでほんのりと紅く染めた目の縁を向けながら、涼平は俺の触れて欲しくない事を、言い出した。俺はそれには答えず、黙って自分の指先を見つめていた。 「夏希、お前まさか彼女の事、まだ忘れられへんのとちゃうやろな?」
頭の上で掌を重ねて押さえ付け、首だけ俺の方に向けて言った。