真愛は顔をあげることは無かったが、時々クスッと笑っているように見えたり、相槌を打ってくれているように見えたので、気分をよくして周りを気にせず、時間を忘れて喋っていた。
話が一段落して、俺は喉が渇いたので通り掛かったウエイターから、オレンジジュースと水割りを一つずつとった。
さっき乾杯した時、真愛はほとんど水割りに口をつけてなかったから、飲めないのかなと思い、オレンジジュースなら大丈夫だろうと思って渡したのだった。
真愛は大事なものを両手で包むようにグラス持って、また小さな囁くような声で、
「ありがとう…」
と言った。その言い方はあの雨の日に聞いた‐気がする‐言い方に似ているように俺には思えた。
真愛は続けて、
「ごめんね…」
と今度はもっと小さい声で、呟いた。
何故俺に謝るのかがわからなかったので、 「何で謝るの?」
と真愛に聞き返してしまった。
真愛はやっぱり俯いたまま、俺の渡したオレンジジュースを一口啜った。