香緒里さんと真愛は、何か話していたみたいだったが、俺達を見ると話を止めた。
そして涼平が持ってきた料理を見ると、
「美味しそう」
と言って本当に美味しそうに食べていた。 俺が持ってきた方は、真愛の前に差し出した。真愛は恥ずかしそうにしながらも、少しだけ食べてくれた。俺も真愛と同じ皿から料理をとって、口に運んでいった。
こういうところの料理が、これほど美味しく感じたのはこれが初めての事だった。
俺は涼平と香緒里さんの目を盗んで、さっと真愛の掌の中に例の紙を押し込んで、そっとウインクした。
真愛は俺に触れられた事で、身体を固くしたが紙を下に落とす事は無かった。
それだけでも俺の作戦第一弾は成功したと思いたかった。
紙を受け取った真愛は香緒里さんの袖を引っ張った。
香緒里さんはいつもの事なのか、大きく頷くと、
「ちょっと待っててね」
と言って、真愛と俺達のそばを離れていった。