きれいになるのは、難しい。汚れることは、いくらでもできるのに…。きれいになること、それを保つことは汚れていくことよりも困難で…。
誰かが言ってた。
「この世界は、白でも黒でもない。灰色…。｣
夕焼けに染まる中で。まるで、別れを惜しむような悲しい笑みで。
「君がいるからさみしくないよ…だけど、君がいるからサミシイんだ。｣
続けて、その人は言った。
黄昏が、僕の胸を煽る…燻っていた僕の悲しみを…
「ばいばい。またね…明日になれば、全部元通りだよ。｣
手を振りながら、その人は言った。僕は、笑顔で手を振り返した。頬に何かが伝う微かな感じがあった。
「またね…。｣
遥か彼方に揺れる夕日。その中に消えていく様に去るその人を、僕は見送った。
頬を伝ったものが涙だと気付いたのは、その人が見えなくなってからだった。
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