「あ〜・・・・・・。」
少年は気だるげな声をだすともなくだした。
やけに冷静だが、彼は今崖から落下中である。
金の瞳に金の髪。
肩までの長さの金髪が、落下しているために鬱陶しくなびく。 下から見た人は黄金の宝石が降ってきたと思うであろうほど、その色は美しく輝いていた。
崖から落ちてから随分と経過しているが、まだ地上にはつかない。
少年が金の瞳をふと横にすべらせると、夜だったはずが、いつの間にか太陽が山の間から顔をのぞかせていた。 その光りもあいまって少年の金髪が更に輝く。
「・・・・・やけに明るいと思ったら・・・・・。」
ふ、と少年はそのととのった顔を笑みの形にした。
これだけ高いところから落ちたら、いかに自分が墜落するであろう地面が木に覆われていようとも即死だろう。
しかし恐怖はなかった。 それどころか、待ち望んだ瞬間といったほうが正しいだろうか。
・・・『彼女』が死んで、自分も跡を追おうとしたが、『彼女』は望んだ。
無情にも、生きろ、と。
望んだ通りに、生きてやった。
これで十分だろう。
この自分がすぐに跡を追わなかっただけでも奇跡に近いのだから。
「・・・はぁ、」
そろそろ地上につくだろう。 ため息をついた少年の目の前が、真っ暗になった。