暫くすると、台所から母が僕を呼ぶ声が聞こえた。どうやら少し早いが夕飯にするみたいだ。
父からビールをついでもらい、一人暮しではなかなか味わえる事のできない豪勢な料理を食べながら両親と一緒に僕が子供の頃の話しをし、昔を懐かしんだ。
母は少し小さくなった様に感じた、父も白髪が随分と増えた様だ。母は食事もそこそこにパタパタと食卓と台所を往復している。父も普段は飲まない酒を飲んで少し上機嫌になっている。
暫くして腹を満たし、満足した父が眠りにつき、僕は母と二人きりになった。母は僕の最近の健康状態や仕事の調子を聞いては時折「大変だねぇ…」と小さく頷いた。
父が眠りについて小一時間程した頃、少し酔いが回って来た僕は、酔い醒ましに外を散歩してくると言い残し外に出た。玄関では母が心配そうに見送りをしてくれた。
酔っていた事もあり、少し上機嫌に家の前の畦道を歩き出した。
幼い頃の記憶を辿りながらフラフラと…しかし、足は確実にあの山に向かっていた。
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