始業式を終えて学活の時間の時、いつもニコニコしている先生が真剣な顔で話し始めた。
「みんなに大切なお話があります。よく聞いてくださいね。中山アキヒコ君が明日、両親の都合で転校することになりました。」
僕は頭の中が真っ白になった。
浮かんでくるのは、アキちゃんがいなくなるのが嫌だという思いだった。僕は学校が終わると急いでアキちゃんの家に走った。
アキちゃんの家に着くと引っ越しのトラックが止まっていた。
僕はアキちゃんの家へ向かって何度もアキちゃんを呼んだ。
「アキちゃん、僕だよ!出てきてよ!」
アキちゃんは家から走ってきて僕が話し始める前に声をかけてきた。
「カンイチ!話がある…」
アキちゃんと僕は公園に向かって歩きだした。
「カンイチ、俺は明日引っ越す予定だったけど今日引っ越すことになった。」
僕は涙が出てきた。
「僕たちは、ずっと友達だよね?」
アキちゃんは何も言わずに、近くにあった自動販売機にあるいていった。「カンイチ、60円あるか?」
アキちゃんは僕に背中を向けたまま言った。
僕はなにも言わずに60円をアキちゃんに渡した。
アキちゃんはポケットから60円を出すと一本のコーラを買って飲み始めた。
「カンイチ、飲め!」
アキちゃんは僕に半分残ったコーラを突き出した。
僕の飲んだコーラはちょとだけしょっぱかった。僕がコーラを飲み終えるとアキちゃんは空き缶を僕の手から取り、あの楽しかった日のように空き缶を掲げ「俺とカンイチの一生親友記念日だ!」そう言った。
空き缶を持ったアキちゃんの手は震えていた。
この日、僕とアキちゃんは一生の友達になった。
ー完ー