停電になって、予備の電気でかろうじて明るい車内に戻った。
まだ脳裏にあの怪物の姿が過ぎる。
「うっ……ぇ…」
気持ち悪くなったので、ホームにあったトイレに駆け込んだ。
便器に着くなり、便器の中に顔を突っ込む
水を流し、すっきりした後、隣のトイレに誰かが入っているのに気付く。
俺は試しに叩いてみた
コンコンッ
コン… コン…
力の無い返事だった
まるで閉じ込められて出れなくなったみたいに。
ドアはもちろん開かない
上に登っても引き上げる力も無い
じゃあこじ開けるしか…?
一応護身用としてポケットに入れていた銃で、鍵を撃ち壊した。
ガキャン!と音の静寂と共に鍵は壊れる
ギィィ……
ドアの中には、女の人がいた。
まだ二十歳にはなってないぐらいの女の子。
衰弱しきっていて、顔が青白い。
俺は急いで電車に運んだ。 「やばいって!」
座席に横にならせて寝かした。
水を飲ませ、ゼリーを口にさせたら、5分後ぐらいに少し、ほんの少しだけ元気になった。
「あ…りがと…う。」
俺は首を振った
「御礼を言いたいのはこっちだよ…!もう誰にも会えないかと…。」
少女はニッと笑って寝てしまった。
ホームでみつけた綺麗なシーツを被せ、しばし安眠させた。
「名前は…まだ聞いてないな。」 ふと思った
「電車が発車します」
「えっ?」
壊せないドアがプシュウ…と閉まる
瓦礫と血糊の景色が遠ざかっていく
!!
今、手を振る少年がみえた。
幻覚ではない、本当の少年が…。
ここがどこなのかわからないのに安眠している少女を見て、呆れ、安心した。
お前は誰なんだ。
すぐにでもたたき起こし聞いてやりたい。
でも電車に揺られ、ゆりかごの様になっているこの状況では起こされても起きたくない。それは俺もわかる
「ツギハ―――IronHeart……―到着まで…時間です」
不気味なアナウンスが耳に入った。
途切れ途切れに聞こえなかった。
「ぅ…ん…ぅ」
横から声がする…
起きた…?
「…あの…おはよう…。」 少女はかなりキョトン、としていた。
「目が覚めたかい?」
うなずいた「はい…あの…ここは…?」
「わからない…、名前は?」
「私は宇佐原茜。」
続く