「ええい!馬鹿者がっ!お前は歌舞伎役者と歌舞伎者の区別もつかんのか?」
ヒステリックに叫ぶオヤジの声で電衛門は目を覚ました。
『なんじゃこりゃぁ』
自分の状況に気付き叫ぼうとしたが喉が傷んで声がでない。
覚えているのは馴染みの店で呑み家路についてしばらくしてから煙幕に包まれたこと。
そのまま意識を失ったらしい。
『あの煙幕で喉をやられたか?くっそーどこのどいつだ。この俺様を……全裸で縛り上げてどうする気だ』
そう、意識を取り戻した電衛門は何故か全裸で縛られていたのだ。
『犯人は変態かもしれん』
変態といえば…と電衛門の脳裏に平賀源外が浮かんでいた。
『まさか…な。あやつが犯人なはずないか。では別な変態?どっちにせよ状況がまったく飲み込めぬ』
電衛門はため息をついて辺りを見回した。