せめて縄が切れればと電衛門は身をよじった。
シュッと電衛門の頬をかすめて赤い風車が畳に突き刺さる。
『ええ?ミント黄門?なんで?カメラどこだ?』
つい浮かれて辺りを見ると天井にミント黄門のレギュラーにして敏腕プロデューサーの約七がいた。
『かっこいい?テレビのまんまじゃん』
「歌舞伎揚げ屋の歌舞伎者電衛門ってのはお前さんかい?」
約七が聞いた。
声が出ないので電衛門は頷いてみせる。
「花のやのおいらん愛染を知ってるな?」
約七の問に再度頷く電衛門。
「成る程。では打ち合わせしたいんだが明日の昼、鰻屋まで来ていただこう。では、これにて失礼」
約七は素早く天井裏へと姿をけした。
残された電衛門は唖然としたまま思う。
『来いって…この状況で放置してく気かよ?せめて縄ほどいてってくれよ』
〈つづく…〉