俺は病室を飛び出した。茜を探すために。それは怒りに似た感情が自分の中に芽生えたからだった。俺は病院中を探し回った。どんなに探しても見つからない。俺はそれでも必死に探した。そして茜は屋上にいた。息を切らしたまま俺は語った。「何であんな言い方をするんだ。お母さんは茜さんを想って俺をここに呼んだんだぞ。お母さんの気持ち考えてみろよ。」俺は怒りを抑えて諭すように言った。しかし、俺の言葉にはしっかりと怒りが見て取れた。すると茜はまたどこかへ行こうとした。
「待てよ。」
俺は茜の手を掴んだ。無意識のうちに手を掴んでいた。
「茜さんはお母さんの気持ちに気付かないのか。それを…」
次の言葉を発しようとしたとき茜は口を開いた。「離してよ。」
茜は冷たく俺に言った。「あっ。すみません。つい。」
俺の言葉にははっきりと動揺が表れていた。下を向きながら次の言葉を探した。
「わかってるよ。」
茜は屋上のフェンスから街を眺めながらそう言った。曇った空は今にも雨が降り出しそうだった。「お母さんが私のためにいろいろやってくれてることは知ってる。それにお母さんにはすごく感謝してる。でももう終わるんだよ。」
茜は沈んだ声で言った。