プラザ万葉付近にようやく着いた。
哲史は、妹から電話があり、話をすましてから後を追ってくると言っていた。
あいつは若干シスコンだし、たまにしか妹と話せない。
だから、どんな些細なことでも、妹を優先する。
当然、俺のことよりも。
みんなはバカにするかもしれないが、事情が事情だし、俺はいいと思っている。
だから、行き先だけ告げてわかれた。
時計の針は、三時半をさしている。
急がないと。
しかし、プラザ万葉の付近は、事件を一目見ようとするやじ馬でいっぱいだった。
また、当然に封鎖されており、中には入れない。
だが中にようなどない。
必要なものは外にある。
警察官に走って近付こうとしたとき、人波の中に、見たことのある顔がいた。
「おい!あんた!」
離れた所にいるそいつに、大声で話かける。
しかし、俺の声は聞こえてないようだ。
「くそ!またかよ!」
悪態をつきながら、人波の中を進む。
しかし、見失った。
探すか?いや、時間がない。
偶然かもしれない。
見つけても使えないかもしれない。
わずかな可能性よりも、確実な手掛りのほうが大事だ。
俺は、踵を返して、警察官のもとへ向かった。
「君、これ以上中には入れないよ。」
当たり前だが静止される。
少女がこの奥にいなければ、入らなくてもいい。
俺は涙目になりながら、
「僕の妹が中にいたんだ!」
演技をはじめる。
「妹は、どこにいるんです!? お願いですから教えてください!」
さあ、ひっかかれ。
「そうでしたか。あちらに被害者がいますので、どうぞ。もしあちらにいないようでしたら、言ってください。」
少し目を細目、あわれむように言った。
向こうにいなければ、この世にはもういないのだろう。
しかし、うまくいった。
「ありがとうございます。」
俺は被害者達の元に走っていった。
そこにはビルや、中央区の規模から見れば少いが、俺の想像していたより、多くの人がいた。
警察官に話をきかれていたり、怪我を見てもらったりしている。
ニュースで言ってたとおり、軽傷者しかいない。
病院に行かなければならない人はいなかったようだ。
さてここからだな。
女に片っ端からきいてる暇はない。
なら、あちらからでてきてもらう。
俺は携帯をとりだし、ムービーを再生した。