大繁盛で賑やかな花のやの最上階にある愛染太夫の個室。
そこだけは静まり返っていた。
愛染太夫の前には頭巾を被った侍が座っている。
「今…なんと言ったのでありんすか?」
営業用の口に蝿がとまりそうなユッタリ口調で愛染が聞いた。
「ですから、拙者ミント黄門のレギュラーもやってます放送作家のウッカリ九平なんですが」
頭巾の侍、九平がいいながら頭巾を外した。
「やーん、本物?びっくりぃ?じゃなかった…驚いたでありんす」
「いいですよ、カメラも回ってませんし無理しておいらん言葉つかわなくても」 九平の言葉に愛染はニッコリ微笑んだ。
「助かります。私元来早口なもんで、おいらん言葉が苦痛で…ホホッ」
同じ頃、鰻屋で夕食をとっていた源外の前にも大柄な侍が現われていた。
「お前さん、飛皿だね。ミント黄門見てるよ」
肝吸いを一口飲んで源外はそう言った。
飛皿と呼ばれた男は静かに頷いた。
「お前さん確かミント黄門のディレクターもやってるんだっけな。…ってことは葉書が当たった……そして裏をとりに来たってとこだろうな」
源外は変態だが流石に発明家だといいはるだけに意外にもカンはいいのだ。
〈つづく……頑張れ?〉