何故レンが驚いたのか。それは、何と、店のドアの真横にあるちっちゃなテーブル席で、一人のオッサンがジョッキを片手に机にもたれかけ、爆睡していたのである。真っ昼間に。
「あらら、リストラでもされたのかしら」
少し、むかつく口調でレンが言う。しかし、このオッサン。オッサンと言っても、無精ひげは生えているが、髪もちゃんとある。そして何より、イケメンであった。そこらへんで、カウボーイでもやっていそうな感じである。そしてこの状態、かなりスタミナはあるようだ。
「…ま、こういう人とは関わらない方がいいよね」
レンはオッサンを起こさないように、忍び足で出口へと向かった。
「………ん?…うお!」
レンは、床に落ちていた酒瓶につまずいて転んでしまった。
「いてて……俺、最近こういうのばっか…」
レンが悲しんでいると。
「あ〜〜何だぁ?誰かいんのかぁ?」
「…やっべ…」
レンが転んだ時の音で、オッサンが起きてしまった。
「あ〜?何だこの坊主?俺の眠りを妨げたのはお前か?」
オッサンは、眠りを妨げられて、イラついている様子だ。
「すいません、オッサ…オジサン」
レンは、とりあえず謝ってみた。
「あ〜?誰がオジサンだ…俺は28だ!」
「え〜〜〜!!」