ひたすら出口へと逃げるレン。だが、飛竜との距離はみるみる縮まっていく。焦りのためか、レンはつまづいてしまった。まさに、絶体絶命という奴である。レンの頭に、死という文字がよぎった。飛竜はもうすぐそこまで来ている。走馬灯を流す時間すら、与えなかった。レンは死を覚悟して、目をつむった。
ガキーン!
鈍い音がした。レンは目を開けた。
「…え?……お前は…」
レンの目の前に、銀色の巨大な狼が立ち、飛竜の攻撃を防いでいる。
『ナニヲシテイル…ハヤク…ニゲロ!』
「お…おう…」
言われるがままに、レンは出口へと急いだ。
レンが洞窟を出たその瞬間、洞窟が崩れた。
「……そ…そんな…」
レンはその場に膝まついた。いくら《獣》とは言え、助けて貰ったんだからお礼くらい言いたかった。
その時だった。崩れた洞窟のがれきの山が、うごめいている。そして、銀色の巨大な狼が、飛び出して来た。
『ワタシヲカッテニコロスナ!』
「……良かった…」
《獣》は生きていた。だが…。
『……ユダンスルナ……マダオワッテハイナイ!』
《獣》とレンはがれきの山を睨みつけた。そして、そこから黒い飛竜が飛び出して来た。