「すごい…」
車から降りた私は目の前に広がる景色にため息をついた。
青く広がる海と空。太陽がそれを全て包み込み、輝きを放っている。
湿った風が、潮の香りを運んで私の鼻を擽る。
「ここって……鎌倉?」
「そう、稲村ヶ崎。」
3時間車に揺られている間、大体向かっている場所は鎌倉だとわかったが、こんな綺麗な景色が見れるだなんて思っても見なかった。
「ずっと来たかったんだよな-!!ここ、サザンの縁の地だからさ。」
車の中でかかっていた音楽は、サザンオールスターズ。悟は季節を問わずエンドレスで流すほど好きなアーティストだ。
「でも、来ようと思ってたならいつでも来れたのに。って言うか、緊張って?」
そう言う私に悟は頭をかきながら私に向かって姿勢よく立った。
「ここは、俺にとって特別な場所なんだ。」
「特別な場所?」
「そう。ずっと決めてたんだよ。なんて言うか…まぁ、今はお前しかいないし。」
なんだか勿体ぶった言い方をする悟。目は泳いでるし、口ごもってるし。
はっきりしてくれないと、私もよくわからない。
真面目な顔をすれば良いの?
嬉しそうな顔をすれば良いの?
どんな顔をしたら良い?
わたしはどんな気持ちでいたら良いの?