携帯から発せられる覆面の声。
それをながしたまま歩く。
ムービーをとっていてよかった。
たとえ、変声機で声を変えていても、話し方などでわかるかもしれない。
少女が覆面のことをどのくらい知っているかは知らんが、追っているぐらいだ。
俺たちよりは知っているだろう。
一通り歩いたが、話しかけてくるやつはいない。
反応で判断しようにも、大抵のやつが怪訝そうな目で見てくる。
まあ、爆破の被害者たちの前で、変声機を使っている声をながしてるんだ。当然だな。
警戒しているのか?
それとも、警察官と話しているのか?
当たり前だが、警察官の近くではムービーは止めていた。
ならば、次だ。
俺は息を大きく吸い、
「天は我にあり!」
忌むべき台詞を大声で言った。
突然大声をだしたものだから、皆俺を見る。
異常者だと思われただろうか。
だが、これで少女も、俺が覆面と関係があることを確信しただろう。
この言葉はあの時は、手紙の最後に書いてあった。
意味などないだろう。
なら、これは覆面のキメ台詞のようなものと考えられる。
今回も俺を挑発するためとはいい、自分を判断させる材料に使ったのだから。
だったら、少女が知っていてもおかしくない。
まあ、警察官に怪しまれただろうがな。
だが、それでもいい。
警察官が近付いてくる。
助けてくれる。
「君、ちょっといいかな。」
警察官が俺に手を伸ばした。
きっと、大丈夫。
信じきっている俺の肩に手が触れた。
そのとき―――\r
「お兄ちゃん!」
一人の女が抱き付いてきた。
ほらね。
少女が助けてくれる。
「来てくれてたのね? 合言葉を聞くまでわからなかったわ。」
合言葉ね。
そうきたか。
のってやる。
「俺もお前が見つからなくて、困ってたんだよ。本当に合言葉があってよかった。」
喜びあう二人を見て、邪魔をしては悪いと思ったのだろう。
警察官は離れていった。
それを確認して
「あなたは、誰?」
女は素に戻り、話しかけてきた。
こいつが少女だろう。
「あなたは、誰ときいているの?」
強気な女だ。
それに、少女ってかんじじゃない。
だが、綺麗な顔をしている。
「私が助けるとよんで、大声であんなことを言ったわね?」
睨み付けてくる。
髪も長くて綺麗だ。