イヌ恋 ?

 2008-07-08投稿
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さらに一呼吸置き、周助は続きを躊躇った。

「周助さん、私今はまだ高校生だから半端な事しか言えない。でも卒業したら必ず、周助さんの力になる。だから…。」

「ごめん。」

ブツッと電話が切られた。



(もう少しで、俺は夢の世界に行けた。)

まどろみながら、周助は数日前までの「美大生」生活を思い出していた。

「丸井くんて生き物描くのが上手だね!」

「周助に動物描かせたらこの大学で一番だよ。」

「絵に一番とかあるかよ。」

―いつも3、4人でたむろって。
褒められたことが無かったから。
絵を目一杯練習した。
毎日。

モデルなら尽きなかった。
そういう意味でもペットショップの中は俺にとって天国だった。
ペット達になつかれているのが自分でも分かる。
俺もアイツらが好きだった。―\r

「あなた、今日はお酒はもう…」

父親の声の代わりに、酒瓶が砕き割れる音が聞こえた。

いつもの喧嘩だった。

俺はカメの「ユウゾウ」の歩く姿をデッサンしていたため、半分集中力が削がれていた。


その時既に、母親は事切れていた。

父親の振り投げた酒瓶はそのまま母親の後頭部に当たり、粉砕した。

動転した父親はそのまま火を放った。



周助はユウゾウが家の中の方を向いていることに気付いた。
しかし、そのすぐそばまで火の手は迫っていた。

訳も分からぬまま、周助は持ち運べるペットのゲージを急いで店の外へ避難させた。

火に驚く動物たちの鳴き声が響き、近所の人たちが駆けつけた。

犬や猫、ハムスターなど、とにかく小型の動物から運べるだけ運ぼうとした。


しかし、周助の気付いた頃には店自体が火だるまになっていた。

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