さらに一呼吸置き、周助は続きを躊躇った。
「周助さん、私今はまだ高校生だから半端な事しか言えない。でも卒業したら必ず、周助さんの力になる。だから…。」
「ごめん。」
ブツッと電話が切られた。
(もう少しで、俺は夢の世界に行けた。)
まどろみながら、周助は数日前までの「美大生」生活を思い出していた。
「丸井くんて生き物描くのが上手だね!」
「周助に動物描かせたらこの大学で一番だよ。」
「絵に一番とかあるかよ。」
―いつも3、4人でたむろって。
褒められたことが無かったから。
絵を目一杯練習した。
毎日。
モデルなら尽きなかった。
そういう意味でもペットショップの中は俺にとって天国だった。
ペット達になつかれているのが自分でも分かる。
俺もアイツらが好きだった。―\r
「あなた、今日はお酒はもう…」
父親の声の代わりに、酒瓶が砕き割れる音が聞こえた。
いつもの喧嘩だった。
俺はカメの「ユウゾウ」の歩く姿をデッサンしていたため、半分集中力が削がれていた。
その時既に、母親は事切れていた。
父親の振り投げた酒瓶はそのまま母親の後頭部に当たり、粉砕した。
動転した父親はそのまま火を放った。
周助はユウゾウが家の中の方を向いていることに気付いた。
しかし、そのすぐそばまで火の手は迫っていた。
訳も分からぬまま、周助は持ち運べるペットのゲージを急いで店の外へ避難させた。
火に驚く動物たちの鳴き声が響き、近所の人たちが駆けつけた。
犬や猫、ハムスターなど、とにかく小型の動物から運べるだけ運ぼうとした。
しかし、周助の気付いた頃には店自体が火だるまになっていた。