周助は自分の意識が遠退くのを感じた。
煙を吸い過ぎたらしい。
―まだ、中に。
動物たちが。
助けて。
母…さん。―\r
「ゥウウッ!!ワウワウ!!」
アカネが激しく鳴き喚く声に、周助は意識を取り戻した。
見ると、近所の人たちが自分を助け出してくれた直後だった。朝の火事ということもあり、近所は騒然となっていた。
目の前ではアカネが知らない男にゲージごと持って行かれようとしていた。
「……ぁ…やめっ!ゴホッ!」
(喉が、うまく声が。)
周助はゲージごとダンボールに箱詰めされるアカネを無理矢理、男から奪った。
「あ!キミ!」
急に雨が降り出してきたことは幸運だった。
声が少しは出せるようになっていた。
「アカネ……いい子にしてろ。」
周助には考えがあった。
アカネはショップの動物ではなく、預かっていただけだと、保健所の人に話すのだ。
アカネ一匹なら救える。
不甲斐なさに周助は涙が止まらなかったが、皮肉にも雨が涙を洗ってくれた。
「じゃあ一週間後に確認に来ますので。先ほどの犬の飼い主の方を紹介してください。」
「はい…。」
「事情も知らずすみませんでした。」
社交辞令で言ったことが分かりすぎるほど、感情の無い口調だった。