翌朝、茜の自宅に電話してみたが、留守だった。
一日だけ飼い主のフリをしてくれないかと頼むつもりだった。
留守電だけ入れてみる。
夕方頃、当然電話がかかってきた。
「帰ったら留守電入ってたんで驚いちゃいました!どうしました?」
(元気になれる声だ。)
「あの、火事からもうすぐ一週間なんだけど、保健所の人がアカネを引き取りに来るんだ。」
「え…?」
「ウソついて他に飼い主が居るって言ったら一応確認しに来るみたいで。それで、出来れば。」
「私がアカネの飼い主になれば良いんですね!」
「その日だけで良いんだ。頼めるかな?」
「喜んで!」
茜は心が踊った。
乗りかかった船とはいえ、周助のような人の手助けが出来るなら喜んでしようと思った。
周助は悲しみや不安と共に、茜に対して言い表せない感情を抱き始めていた。
感謝もあるが、もっと能動的な…。
「…お邪魔します。」
茜ははしゃいだ自分を少し反省した。
周助が今住んでいるのは火を免れた住宅家屋であり、真横には焼け崩れたペットショップ・マルイが今も残っていた。
「明日辺りに瓦礫を片付けてくれるらしいんだけどね。茜ちゃん?」
見ると茜は瓦礫を見つめながら一筋、涙を流していた。
「……。ありがとう、動物たちの供養になるよ。」
茜は頭を撫でられたが、哀しげに周助を見つめた。
「周助さんだよ…。」
「え…」
「一番辛いの…周助さんだよ。こんな、こんなことになって。平気なハズないよ!泣いて良いよ…周助さん。」
周助は微笑みながら、家の中へと茜を促した。