「これはどういうことだ!!」
〔TheGodOfDay〕によって焦土と化したニューヨークの様子を伝える報告書を叩きつけ、月大統領エドワードは秘書官を怒鳴り付けた。
「見ての通り、ニューヨークの……」
「そんな事はわかってる!何故私の許可無しにあの悪魔の兵器が使用されたのかと聞いているんだ!!」
秘書官は笑いながら答えた。
「何を言っておいでです?このサインは貴方の書いたものですよ」
「覚えは無い!」
〔TheGodOfDay〕の使用にはエドワード大統領の許可が必要で、エドワードにはそれを書いた覚えが無いのだ。
「結局ニューヨークを陥落させる事ができた訳ですし」
「そういう問題ではないんだ!交渉の場が無くなったんだぞ!!泥沼になる!我々は共存の道を探さなくてはいけなかったのに!!!」
ますます顔を紅潮させてエドワードは怒鳴った。
「いいわ。私から説明しますから」
エドワードは自分の耳を疑った。
「君は?…何故…え?」
聞き覚えがあるというようなレベルではない。
ほんの一年前まで毎朝その腕に抱いていた声だ。
そして、もう絶対に聞くことの出来ない声のはずだった。
「レイチュル…?」
あり得ない。彼女は、レイチュル・ケネディは去年の11月22日、地球の連中に殺されたはず…
「閣下、お久しぶりです」
「本当に生きて…いるのか?」
「もちろん、足もあります」
天にも昇る気分とはこの事だ。
そう。この戦争も、本音を言えば君の仇をとる為に起こしたと言っても過言ではないのだ。
「もっと顔をよく見せてくれ…!」
薄暗い室内のため、顔をよく見ようと引き寄せて、絶句した。
「レ、レイチュル…その顔は?」
彼女の顔の右半分は焼けただれ、目には眼帯をしていた。
「弾に毒が…死は免れたものの二度と貴方には見せられぬ顔に…」
「…」
「閣下、でも私は地球に行って死にかけて、良かったように思いますわ」
エドワードの頬を撫で、その手を後ろに回しながらレイチュルは言った。
「どれだけ地球の同胞が私達を憎んでいたかを知ることが出来ましたし、一度死んだからか、見方も色々と変わりました」
輝く笑顔を見せ、レイチュルは黄金の瞳を真っ直ぐこちらに向けて言い放った。
「私達は相容れない存在なのだと、殺しあい、奪いあい、喰いあえばいいと、そう思います」