痛みの色

アイ  2008-07-09投稿
閲覧数[399] 良い投票[0] 悪い投票[0]

この痛みを何の色にたとえよう。
赤、赤、赤。
針で指を突き刺したみたいに、小さな血の玉が、じわりと心の表面に浮かび上がって。
青、青、青。
降り続く雨の中、ずぶ濡れで、差し伸べられる傘もなく、たった一人で立ち尽くして。
黒、黒、黒。
そう、それは、本当にただ闇で。
世界の非情なのに慣れた。哀しみの色を何度も何度も見てきた。
痛みは痛みを通り越して、もうどんなに痛くても悲しくても、涙は出てこなくなった。
代わりに優しくされた時にだけ、それは流れた。
日だまりは温かくて恐ろしい。いつか、誰かの手でそこから押し出されるのが、怖かった。

絶対幸福など存在しないと知っていた。
だから。
私は、痛みの色を覚えておこう。
きれいな赤も、澄んだ青も、麗しき黒も。
全部全部、心にとらえて、離さない。
再来する痛みに備えるために。
何よりも、自分を痛みから守るために。

もう二度と誰かの優しさに、涙を流さなくて済むように。
私は、痛みの色を忘れない。

忘れない。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 アイ 」さんの小説

もっと見る

詩・短歌・俳句の新着小説

もっと見る

[PR]
人気カラコン送料無料
ポイント20倍で激安!


▲ページトップ