一章・夢
私には、リュウという彼氏がいた。
髪は黒で、肌はどちらかといえば色黒で…。でも、不良では無かった。
性格はどこにでもいるような性格で、ルックスは中の上。
そんな彼と私の物語。。。
「頑張れ〜!」
体育祭。
高校生の応援席で、中学二年生の私は、そう叫んだ。
所々から、
「何だぁ?あの中学生」
とか言う声が聞こえるけど、気にしなかった。
しばらくして、リュウが応援席に帰って来た。
「よ!…って、何でお前がここいるん?」
「応援してたんだからねっ」
私は余分にデスチャーをする。
「そうなん?ありがとさん♪」
私の頬は赤くなる。
「リュウ〜、そいつ誰だよー」
向こうから、スポーツ系の男が来る。
「俺の彼女♪」
私は肩を寄せられた。
「そいつ中学生じゃん」
「年齢とか関係ないやろ」
二人の会話は長々と続いた。
「…今の人は?」
「長野 ユウキ」
彼の名は校内で、リレー等の選手で有名だった。
私は自分の種目が次だからと、自分の応援席へと帰った。
『中学生種目。演技』
アナウンスの声と号令がかかり、私達は広いグラウンドに広がる。
…リュウ、見てるかな。
私は高校生の応援席に目をやった。
「……………!?」
目に飛び込んできたのは、知らない女の先輩と、リュウが話している姿。
ただの女友達だといいけど…。
私はその事で頭がいっぱいになって、演技もちゃんと出来なかった。
―演技が終わると、私は自分の応援席に座り、お茶を一杯、口にした。
「仁〜奈♪」
友達のナギサだ。
「さっきの演技の時、いつもより元気無かったよねぇ?」
心配そうな表情を浮かべるナギサ。
「別に?暑かったからやる気がね…」
そんなの、言い訳に過ぎないんだけど。
私達の演技の次が終わった時。
携帯が震えた。
私は一度トイレまで走って、携帯を開く。
「もしもし?」
『あ、仁奈?』
リュウ…だ。
私は怒っている事をアピールしようと、声のトーンを一つ下げた。
「何ですかぁ?」
『怒っとる?』
「うん。浮気者が」
『さっきの先輩はな、単なる友達やねん』
友達…。
「本当に?」
『命賭けたる』
「じゃあ、信じる」
私は携帯を閉じ、また応援席まで戻った。