「でも…本当に大きな事故だったわよね。トラックと正面衝突して助かるなんてあなた、よほどの運の持ち主かもね。」
由紀は、拓海の背中で気持ち良さそうに寝ている。
「だけど、その後全ての記憶を失ってて、本当に怖かったでしょうね。何を信じていいか分からないし、孤独だったと思うわ。」
「そんな時に担当だったキミに助けられた!」
「それから時が過ぎて、あなたとの結婚が決まって、めでたく由紀を授かったのよね。そんな由紀も、もう五歳になって…」
由紀は相変わらず気持ち良さそうに寝ている。
「ねぇ覚えてる?女の子を授かったって分かった時、あなた即答でこう言ったのよ。名前ば由紀にしよゔって。どうしてって聞いても、理由はわからないって。」
「そうだったな…でも本当に分からないんだよ。女の子って聞いた瞬間にその名前が頭に浮かんだ…」
「まぁ、実は昔の恋人の名前だったりして。」
「まさかぁ、からかうなよ!」
拓海は、予想外の言葉に思わず咳き込んだが、周りに人がいないか一応確認してから、恵美に軽くキスをした。
「俺はお前とふたりの宝物由紀を一生守って行くことを約束します。」
「じゃあ、しっかりお願いしますよ!」
恵美はいつもの笑顔で、軽くキスを返した。