第9章 覚醒
私は幼少の頃から不思議な体験をしてきました。この不思議な体験を他人に話すと、信じてくれる方
「夢を見ていたのでは?」
と、言う方、
「作り話だ。」
と、言って否定される方、様々です。
素直な気持ちで、心の目を開き、私の不思議な体験を聞いて下さい。
私には、普通の方では考えられない程、幼い頃の記憶が在ります。ぼんやりとした記憶では無く、色鮮やかで、はっきりとした映像と音での記憶です。それは私が生まれて初めて、父方の祖母に会った日の記憶です。赤ん坊である私は無論動く事はできないので、ただ上を向いて寝ているだけです。顔の前に、とても若い父と母、父方の祖母の顔が私を覗き込んで微笑んでいました。父は白い作業服、母は黒、赤、灰色の和服、祖母は灰色の和服姿でした。祖母が、
「この子、見えてんのやろか? こっち見てるで。」
母が、
「まだ10日程やから、見えてないわ、叔母ちゃん。」
父が母をたしなめて、
「お母さんやろ。ほやけど、こっち見てるで。」
「ええんよ、カネちゃんに、お母さんなんて言われたら、何かこそばいわ。」
母が、
「ほうらカッちゃん、叔母ちゃんも、ええって言うたはる。」
父は勝雄、母は金子、いとこ同士の結婚でした。
他人に、この話をすると、私が成長してから、幼い頃の写真を見て、記憶が在ると勘違いしているだけと否定されます。でも、私の赤ん坊の頃の写真は無く、兄のアルバムに残っている祖母や父母の写真はモノクロ写真で、着物の色を知る事は出来ないのです。ましてや、私が1歳になるまでに亡くなっている祖母の声を知る事は不可能です。でも、私は祖母や父母の衣服の色や声を鮮明に記憶しているのです。これは、写真を見たり、録音された音声を聞いて感じた既知感では無く、私が幼い頃から持っている鮮明な記憶です。
その祖母の三回忌、私が3歳になるまでの事です。両親、兄と私の4人で、父の実家に祖母の法事に行った夜、大人達は酒を飲んで、楽しんでいましたが、幼い私は、退屈で仕方がありませんでした。そんな私を、当時中学生位の従兄が散歩に連れ出してくれました。
外灯も無く、真っ暗闇でしたから、従兄は明かりが届く家の周囲を散歩させてくれました。ふと、家の屋根の上を見ると、黄色い火の玉が3個、ふわふわと浮かんでいました。
つづく