―この街に来て初めての日―＼r
天気は快晴。やさしい日差しの昼下がり。
「…また、ここに戻ってきたんだな…。｣
心地の良い懐かしさ。その風景は、遥か昔の記憶に色をつける。
きっとここに帰ってくると決めた日から、どれくらい経っただろう？
少年の頃に踏みしめたこの地と、今踏みしめているこの地。確かに同じはずなのに…。あの頃と同じ気持ちになれない。
―それは…―＼r
時が過ぎたから？大人になったから？汚れたから…？
そんな、とりとめのないことを思い描く。
この胸に残っているあの頃の純粋な気持ちも、確かなもの。大好きなこの場所で過ごしたのだから忘れもしない。いや、忘れられない。
だけど。
何故だろう？何かが欠けている…。ぽっかりと、穴があいた様に。
「それは、誰…？｣
風に訊いた。風は何も言わずに通り過ぎた。ただ、かわりに…ここで流した涙の跡をやさしくなでて消えた。
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