ここは、魔物が住まう崖淵斜陽館と申します。
本日のお客様は『公園』でございます。
今宵は、いかなる展開に成るのでございましょうか。
雨あがりの公園で、1人の若い女性が傘を持って立って居る。
もう、1年に成るだろうか。
毎日欠かさずに、午後三時から、夕方五時迄公園に来ている。
二ヶ月前位から、子犬が、彼女に、なつく様に成っていた。
彼女は、毎日同じ事を子犬に話かけるのだった。
「ずっと前に大好きだった、彼氏に捨てられたの、貴方も捨てられたの。」
子犬は可愛く、尻尾をふるだけ。
「在る占い師さんがね、毎日この公園に来ると、素敵な恋に巡り逢えるって、言われたんだけど、随分に成るわ。」
じゃれつく、子犬を撫でながら、ある言葉を彼女は思い出したのだった。
「あら、確か占い師さん…何か、言ってたわね」
暫く思い出すと、確かに《動物が可愛いと思ったら、アクトレイザァと呪文を》
彼女は、子犬に
「アクトレイザァー」と呪文を叫んだ。
不思議な事は何も起らない。
「やっばり無理だったわ」
と公園を後にした彼女の姿は、次第に、犬に変化して行くではないか。
振り向くと、さっき迄じゃれていた子犬が、王子様に見えた。
二匹の子犬は、じゃれあいながら、公園に戻って見えなく成った。
如何でございましたでしょうか。
次の、お客様は、貴方かも知れません。