「おめでとう」
祝福の拍手の中で大きな花束をいくつも受け取った私は 滅多に使わないタクシーで会社を後にした。
「ありがとう」の笑顔の作り過ぎで 私は後部座席で花に埋もれて力尽きた。
あれ・・・行き先言ったっけ???・・・まぁいいか。
と 頭はかろうじて働いているものの言葉にはならず 気が付くとタクシーは私の知らない風景の中を走っていた。
「あの・・・」
私がようやく言いかけた時 車は静かに停車して扉が開いた。
「あの・・・」
不思議な感覚だった。降りなければいけないと感じた。
ここがどこなのかとか 今が何時なのかとか そうゆう事はどうでもよくて ただここで降りなければいけない・・・それだけを強く感じた。