『あまり遅くなったら、母さん心配するぜ。』
『うん。』
聖人は、あたしを家の前まで送ってくれた。
結局、もう一度今来た道を引き返す事になっちゃった。
家の前まで来た時、聖人はもう一度優しくキスをしてくれた。
『じゃあな。お母さんによろしく。』
そう言うと、聖人は小走りに去って行った。
聖人の姿が見えなくなると、あたしも家の中へ入った。
『お母さん。』
さっき帰って来たばかりの母は、テーブルの上にブッシュ・ド・ノエルを乗せて、
その上のキャンドルに火を点けるのを、あたしの為に待っていてくれた。
『奈央。お友達、みんないい子達ね。』
母が、外からリビングに入ったばかりのあたしに向かってそう言った。
『うん。みんなとてもいい人達なんだ。』
『‥‥母さん、奈央に謝らなければならないわね。』
『えっ?!何で?!』
『母さんは、いつも奈央を信じているけど、最近は忙しくてあなたとゆっくり話す機会が全然無かったわね‥‥‥。
彼‥‥聖人君。
なかなかの好青年ね。
礼儀正しい子は、母さん好きよ。
母さん彼の事、誤解してたわ。
奈央、ごめんね。』
母はあたしに謝った。
『お母さん、あたしはもう全然気にしてないよ。』
分かってくれたら、それでいいんだ。
シュッ――
母はマッチを擦って、キャンドルに火を点けた。
『奈央。聖人君て、なかなかハンサムよね。』
点けたばかりのキャンドルの灯りをじっと見つめながら、母が言った。
『うん。そうよ。カッコイイんだから。』
思わず得意気にそう答えたあたし。
『奈央。今からは母さんと奈央の2人だけのクリスマスよ。』
そう――
小さい頃は毎年、クリスマスを母と2人だけで過ごしていたんだっけ。
母は、それを今も覚えていてくれたんだ。
『メリークリスマス!!』
カチャン――
母とあたしはグラスを合わせて乾杯をした。