夜更け、住人が床についた鰻屋の戸が激しく叩かれた。
ドンドンドン!
「源外起きろ―!」
馬鹿デカイ近所迷惑な声に チッと舌打ちをして源外はつっかい棒を外した。「電衛門!静かにせんか。こんな時間なんだぞ」
源外の言葉を無視して電衛門はズカズカと源外の部屋に上がり込むとグッタリと源外の布団に倒れこみ、「ひでえ目にあったぜ」
と呟いた。
「なにがだ?耽美浮世絵師の目に止まった自慢か?」「……世の中広いぜ…お前以上のヘンタイがいたよ」「誰がヘンタイだ?ワシはちょっとばかり自分の欲望に正直なだけだぞ」
かいがいしくも電衛門のためにお茶をいれながら源外は答えた。
ものは言い様だなと電衛門は思った。
「ところでミント黄門はどうなった」
源外にいれてもらった抹茶入り玄米茶をのみながら電衛門は聞いた。
「一応打ち合わせは済んだぞ。お主抜きだったがな。あ、これ、お銅さんのサイン貰っといてやったぞ」
源外が渡した色紙にはお銅のサイン ちゃんと電衛門さん江とかかれていた。「いやぁお銅さん綺麗だったぞ?よかったなワシが友達思いで」
得意気な源外に電衛門は怒鳴った。
「友達思いなら助けに来いよな―?」
「うむ…言われてみれば確かにそうだな。ワシがいけば…ワシもモデルになれただろうに………」
いやぁ惜しいことをしたと頭を抱え落ち込む源外をみて電衛門は『源外もモデルにだと?冗談じゃねえ、ちょうどいいから二人でカランでなんてことになったらおぞましい!』と思い、「すまん、俺が悪かった。お前が来なくて正解だ」 と頭を下げたのだった。
〈つづく〉