オーリュが寝泊まりしているのは、学院の寮の一つ、北の隅にある高い塔のてっぺんだ。
壁にそって螺旋状になっている石の階段の途中には他の部屋への扉もあるが、その塔に現在いるのはオーリュだけである。
高い所はどっちかというと好きだし、1人のほうが楽なのでオーリュはこの塔を気に入っていたがしかし、その階段がおっそろしく長い・・・。
螺旋階段のため、真ん中がぽっかりと空いており、地面が遥か遠くにみえる。
高所恐怖症の者には地獄だろう。
「・・・毎日こんな長い階段降りてるわけ?」
「そうだな。」
「疲れない?」
「・・・もぅ慣れた。」
早足で階段を降りているオーリュに対して、フィディルは浮遊術でふわふわと中に浮きながらその後ろに付いて移動している。
「お前、そんな術も使えるんだなぁ、・・・まぁ、竜だから当たり前か・・・・」
「・・・竜になる前も使えたよ?」
「へぇ・・・そりゃすごい・・・って、はぁ!?」
オーリュは足を止めてフィディルを振り返った。
「竜になる前って・・・」
生まれてないんじゃ・・・?
「・・・おっと、いけないいけない。」
しかしフィディルは口をおさえて、中を すぃ〜っ、と飛んでいってしまった。