ギギィ―………
不意に錆びれた鉄が擦り合う様な音をたてて、門が開いた。
依代は驚いてわずかに後退した。
― こんな山奥に建つ古い屋敷だ。ヤマンバかなんかが出てくるのだろうか…? しかし、門から出てきた者は、依代の想像を遥かに超えた。
「おぉ、来たか来たか。そろそろ来るとは思ってはいたが、案外早かったな」
― 随分とミーハーな山男がいたものだ。
ラップを踊ってそうな格好をしていた。ヨレヨレのジーンズを腰ぱんし、赤と黒の縞模様のTシャツ。首には銀色のドクロだの十字架だの王冠だのがいくつもぶらさかっている。耳と鼻に金色のピアスをし、刈った頭にはつば付き帽子をちょっと横にずらして被っていた。そして何と言っても、この男はとてつもなく背が高かった。