黙って話を聞いていたアリネスは、いきなり自分に話掛けられて、一瞬、驚いたような表情を見せた。
「…そうね。まだ各国からの書簡が届いていないし、何より事件についてまだ不明な点が多すぎるわ。このような状況で軍を結成する事はできないわね」
「そうですか」
ラトはアリネスにそう言われ、安堵の表情を浮かべた。
「ラト殿。まだ犯人が国内にいる可能性は極めて高い。一応こちらでも警察に対してより一層の注意を呼びかけておいたが、それでも不安が残る。そこで緊急連絡施設を設置しようと思うのじゃが、急な事で人員が不足しておる。軍隊からこちらに人出を回してくれると有難いが…」
「結構ですよ。自国の民を守る為なら我々、労は惜しみませんので」
リグラの頼みに、ラトは大きく頷いて、了承した。
「かたじけない。災害連絡網は整っているが、町ごと破壊されてしまってはどうにもならぬからのう…」
リグラは小さく息を吐いて、肩を揺すった。
その時、ラトは何かに気付いたかのように、顎に手を当てて、
「それにしても…どうしてベイスを破壊したんだ…?光にとってあの町は結構遠い場所にあるのに…」
と、呟いて、首を傾げた。「その通りじゃよ、ラト殿」