木製の古ぼけた扉。僕は2回ノックしてから、返事がない事を確かめ、扉を開けた。男が椅子に座っていた。
「やあ」男が言った。
「どうも」僕は言った。
「あまり長くここにいないほうがいい」男は煙草に火をつけた。「君には寒いだろ?」
「寒いです」言われてみるとたしかに寒かった。真冬に裸で雪に埋まっているくらい寒かった。
「この寒さの原因は」男は煙草の煙りを吐き出した。「私にもわからない。もし今ここで死にたくないのなら早く部屋からでたほうがいい」
こんなところで死にたくない。それに、と僕は思う。死ぬにはまだ若すぎる。
そんなわけで僕は部屋から出た。